【BIM未来図・LIXIL④】製品モデルはパッケージ化へ BIM軸に営業戦略変わる

 新型コロナウイルスの感染防止策として企業のテレワークが伸展する中、建設系メーカーの営業方法も変化を余儀なくされている。特に製品カタログを設計者や施工者に送付する商慣習は在宅勤務の拡大で自宅への送付が難しく、メーカー各社は配布数を大幅に減らしているのが現状だ。

 BIMを軸にした提案活動を強めるLIXILでは、今春から新たな試みを始めようとしている。エクステリア営業部エンジニアリング営業グループの山下克人主幹は「エクステリア製品のファミリ(製品モデル)提供は180点に達するが、ホームページで単にデータを並べているだけではカタログと変わらない。施設用途ごとに分かりやすくデータを仕分けし、ワンパッケージの商品テンプレートとして提供する」と明かす。

エクステリア分野ではファミリ180点提供

 LIXILのエクステリア自動設計ツールを社内で活用することを決めた久米設計の田中武設計本部設計推進部上席主査が「テンプレート整備を進める中で同じような製品データが横並びで列挙されても使いにくい。情報を整理してほしいという社内からの要望が多く出ている」というように、設計者サイドからもワンパッケージ化のニーズが見え隠れする。

 LIXILが提供する製品データは、エクステリアの180点に加え、個別案件の対応を中心に展開するビルサッシ・カーテンウォール分野では31点に及ぶ。衛生設備機器や洗面化粧台についてはオートデスクのBIMソフト『Revit』など5つのソフト向けにデータを公開しており、データ数は約570品番2046点にも達する。

 エクステリア事業部商品開発部商品戦略室の遠藤雅人主査は 「ワンパッケージのデータ提供はエクステリア分野に限定してスタートするが、他の分野でも常に設計者ファーストの視点に立った情報提供を心掛ける」と力を込める。エクステリア分野でスタートした自動設計ツールの提供は同社独自の試みとなるだけに、ビル事業本部市場開発統括部エンジニアリング営業部の西村雅雄担当部長は 「10年前にビルサッシ分野で業界に先駆けてBIM対応を進めてきたように、エクステリアでも業界をリードしていく。総合メーカーとして、全方位でBIM普及に貢献していきたい」と強調する。

 LIXILは、BIMが営業の差別化提案として有効に機能することから、BIMを軸に各事業部が連携する枠組みを形づくろうしている。いずれはBIMを各分野統一のインターフェースとしても確立していく考えだ。

 建築分野では官民が一体となった建築BIM推進会議が動き出し、BIMの円滑な導入基盤づくりが進み、ファミリのあり方も一定の方向性が示される見通し。総合メーカーのLIXILがBIM対応に本腰を入れ始めたことで、各分野の専業メーカーにも影響を与えそうだ。ファミリ提供の流れはメーカーの営業戦略として、業界を包み込もうとしている。

製品モデルを使った検証プロジェクト


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